ATS クラッチシステム トラブルシューティング

カーボンクラッチのトラブルシューティングマニュアル

※これはATSカーボンクラッチシリーズに適する内容であり、他社製カーボンクラッチには当てはまりません。

▼カーボンクラッチ/Carbon Clutch 症状一覧

エアコンのスイッチが入ると発生

  • 対策:ミッションの歯打ち音なので解消不能。FR車の場合、音が発生しにくいギヤオイルに交換する。

エンジンブレーキ時に発生

クラッチペダルを踏むと音が止まる

  • 対策:ミッションの歯打ち音なので解消不能。FR車の場合、音が発生しにくいギヤオイルに交換する。

ペダル操作・非操作時に発生

キリキリ・キュルキュル…音がする

  • 対策①:クラッチベアリング点検・交換
  • 対策②:ペダル遊び過少をチェック
  • 対策③:ペダル足のせクセを改善

ベアリングがサラバネに常時接触

  • 対策:レリーズシリンダー内のスプリングの力がベアリングをサラバネに常時押しつける状態になるので、これで正常。

カバー圧着力が過大で心配

圧着力のkg値が大きく、ペダル操作が重いのでは?

  • 原因:軽いペダル操作でより大きな圧着力を得るように設計している。
  • 対策:ツイントリプルのペダル操作力は、圧着力が1100kg→ノーマルの750kgに相当しシングルクラッチSPEC2のペダル操作力は1600kg→500kgに相当なので、これらの圧着力のペダル操作力はノーマルとほぼ同じです。

クランクのスラストメタルの消耗が気になる

  • 原因:軽いペダル操作でより大きな圧着力を得るように設計している。
  • 対策:スラストメタルへの影響の大きさはペダル操作力に比例します。ツイントリプルのペダル操作力は、1100kg→ノーマルの750kgに相当しシングルクラッチSPEC2のペダル操作力は1600kg→500kgに相当なので影響は小さいです。

浅く踏み込んだ位置で切れる

ホンダFF系である

  • 原因:クラッチの切れが良いのでノーマルレリーズのストロークが余る
  • 対策:ペダル遊びを増やして切れ位置を奥に調節する。

ポルシェ用クラッチである

  • 原因:レリーズ周辺で調整できない
  • 対策:ペダルストッパーなどを自作追加して、余分なストロークを殺す。

切れ位置が奥過ぎる

  • 原因①:ノーマルレリーズのストロークが不足している
  • 原因②:AP1,SW20T,JZA80,JZXなどに構造上の都合でストローク不足が生じる
  • 対策:ペダルの遊びを最小にする。ペダル、ロッドなどの支点に給油する。マスターシリンダーをオーバーホールするなどしてストロークのロスを減らす。

組付け直後から切れない

クラッチベアリングは指定品

ベアリングスリーブは指定品

ピボット・フォークは指定品

  • 対策:強化ピボットでもノーマルと同じ高さならOK。

クラッチの組付けは正常

  • 原因:プレート・カーボンディスク・ハブの組付け順序
  • 対策:確認し、組立てミスがあれば、カーボンディスク割れの可能性あり。その場合、ディスクを交換するか否かの判断をする必要あり。

サラバネの状態

  • 原因:中央付近が凹んでいる
  • 対策:鉄プレート類のヒズミが大きいので、プレート類を点検・交換要する。

クラッチベアリングの位置

  • 原因:サラバネに接していないか、フォーク倒れ角が異常
  • 対策:スリーブ、フォーク、ピボットその他の部品の組付け不良。あるいは寸法不良。

フォークのストロークを確保

  • 原因:車で異なるがレリーズシリンダーロッドの位置で10~13mm必要
  • 対策①:ストローク不足の原因を調査し改善する。
  • 対策②:クラッチペダル戻りをノーマル位置に。
  • 対策③:マスターシリンダ・レリーズシリンダのO/H
  • 対策④:クラッチオイル経路のエア噛み。
  • 対策⑤:リバースロッドの位置を取説通りに。

EG6である

  • 原因:前・後期でピボットとフォークが変更されている
  • 対策:同年式の部品を組合せること。

EF8/9,DA6である

  • 原因:ワイヤー式クラッチである
  • 対策:インナーワイヤーが伸びきって調節不能の場合は新品交換。

使用後に切れなくなった

最近、ハードな走行をした

  • 原因:ヒズミ増大による切れ不良
  • 対策:点検修理

3,4速全開で旋回中に

  • 原因:三菱4G63Tである
  • 対策①:同EG固有の現象
  • 対策②:ベアリングを日産30502-21000に変更し切りストローク13%増やす。

ハード走行はしていない

  • 原因:日産SR20エンジンである
  • 対策:サラバネ取付けボルトの磨耗によるサラバネ固定のゆるみによる作動不良、サラバネ支点用リングとサラバネ固定用ボルトを交換する。
  • 原因:ヒズミ累積による切れ不良
  • 対策:点検修理

ジャダーが発生する

シングルクラッチである

  • 原因:通常スタート時に発生
  • 対策①:ジャダーが発生する機種である。
  • 対策②:アイドリング+500~1000RPMの範囲でジャダーが少ないポイントを探してミートする。
  • 原因:レーシングスタート時に発生
  • 対策:ミート回転数を上下してジャダーを回避する。

ツイン・トリプルクラッチである

  • 原因:通常スタート時に発生
  • 対策①:使用時間経過ととも状態が変化することもあります。
  • 対策②:下記要領で少しディスクを擦りあわせして様子をみる
    1)2000RPMで3秒半クラし30秒休憩
    2)2000RPMで3秒半クラし30秒休憩
    ※車両停止状態で、これを10回繰り返す。
  • 対策③:ミッションの老朽化が原因の場合もある。
  • 対策④:クラッチハブの表・裏逆組み

鉄プレートがおかしい

摩擦面に溶解跡発生

  • 対策:直径5~15mm程度の溶解跡は、性能上問題ない。

摩擦面に青色変色発生

  • 対策:青色変色自体は問題ないが、ヒズミの大きさが心配。

摩擦面にヒートクラック発生

  • 対策:長さ5~20mm、深さ0.3mm程度なら問題ない。

カーボンプレートがおかしい

外周角部の小さい欠け発生

  • 対策:半径5mm以下の欠けは、素材性質上発生する可能性がある。

内周スプライン谷部がつぶれて拡大

  • 原因:ハイパワーチューンが施された三菱4G63Tである
  • 対策①:4G63T固有の現象で、クラッチ側での対応策はない。
  • 対策②:破損程度に応じて新品交換を判断する。
  • 対策③:エンジン振動を低くする。

摩擦面の薄片のハクリ

  • 原因:0.1~0.2mm厚の薄片ハクリ
  • 対策:カーボン素材の性質上、まれに発生する。ハクリしても性能上問題はない。

割れ・破損

  • 原因:最小厚さが2mm以上ある
  • 対策:作業ミス(組立て時にプレートを折り曲げるような力を与えた。
  • 原因:最小厚さが2mm未満である
  • 対策:薄すぎて割れることがある。

シングルクラッチ ハブ固定用リング折れ・切断

  • 原因:リング線径1と1.2mmがある
  • 対策:1mmのものは1.2mmのものに交換
  • 原因:着脱したことがある
  • 対策:2度曲げしないこと。折り返さないこと。
  • 原因:リングが焼けている
  • 対策:高回転クラッチミートや半クラッチ操作を多用した直後に停止するときは、クラッチを切った状態でクーリングすること

クランクがおかしい

スラストメタルの磨耗が早い

  • 原因:クランクスラスト荷重は、ペダル踏力に比例する
  • 対策:ディスク枚数を増やして、カバー圧着力を下げる。
  • 原因:走行時にペダルに足を載せるクセがあると悪影響する。
  • 対策:ペダルに足を載せるクセを修正する。

ペダルが重い

クラッチの仕様を確認済み

  • 原因:圧着力に応じて操作力が変化
  • 対策:ペダル周辺を点検し、回転部などに給油

取付け部品は全て指定品

  • 原因:ベアリング、スリーブ、シリンダ
  • 対策:ペダル周辺を点検し、回転部などに給油

周辺部品は純正ノーマル品

  • 原因:各部が無改造である
  • 対策:ペダル周辺を点検し、回転部などに給油
  • 原因:各部が無改造で、ノーマル位置
  • 対策:ペダル周辺を点検し、回転部などに給油

滑っているような気がする

アクセルを踏み続けるとEG回転がレブまで急上昇する

  • 原因:慣らし不足・オイル付着・ペダル遊び過少・伝達容量不足・ヒズミ・消耗

アクセルを踏み続けるとEG回転が上昇降下し再上昇する

  • 原因:慣らし不足・オイル付着・ペダル遊び過少・伝達容量不足・ヒズミ・消耗

ミート時に繋がりがヌルッと感じる

  • 対策①:EG回転が急上昇しないのであれば、メタルに比べるとソフトにミートするが異常ではない。
  • 対策②:EG回転がレブまで急上昇するのであれば、慣らし不足・オイル付着・ペダル遊び過少・伝達容量不足・ヒズミ・消耗

レーシングスタートで滑る

1速全開スタートで滑る

  • 原因:正常だと滑らないので要点検
  • 対策:慣らし不足・オイル付着・ペダル遊び過少・伝達容量不足・ヒズミ・消耗

シフトアップ時に滑る

2~6速へのシフトアップ中に

  • 対策:油圧配管中の干渉装置を除く
  • 原因:その他が正常だと滑らない
  • 対策:慣らし不足・オイル付着・ペダル遊び過少・伝達容量不足・ヒズミ・消耗

蹴ると滑る

ドリフトなどで使用中に

  • 原因:クラッチオイルの戻りが遅い
  • 対策:油圧配管中の干渉装置を除く
  • 原因:その他が正常だと滑らない
  • 対策:慣らし不足・オイル付着・ペダル遊び過少・伝達容量不足・ヒズミ・消耗

組付け直後から滑る

シャシーダイでパワーチェックしているときに滑った

  • 原因:慣らし運転不足
  • 対策①:さらに300Km慣らし運転後フルパワーチェック
  • 対策②:滑ったら、さらに300Km慣らし運転後に再チェック

サラバネの状態

  • 原因:中央が盛り上がって山形である
  • 対策:カーボンディスクが磨耗してカバー圧着力が下がっている

低パワー時、1,2速時に滑る

  • 原因:摩擦面にオイル付着
  • 対策①:摩擦面・サラバネ・シャフトのオイルをクリーナーで除去する
  • 対策②:ハブスプラインにグリスは塗らない
  • 対策③:ベアリングスリーブにごく少量グリスを塗る

温まると滑る

レリースシリンダーのロッドが手で押し込めない

  • 原因:ペダル遊び過少
  • 対策:ペダル遊びを増す

ロッドは押し込める

  • 原因:使い方が過酷で、加熱でカバーが歪んでいる
  • 対策①:冷却する
  • 対策②:半クラッチ操作を減らす
  • 対策③:レリーズベアリングの後退スペースを増す
  • 対策④:鉄製カバーに交換する

慣らし運手終了後に滑る

最近、クラッチ周辺をさわってない

  • 原因:慣らし運転不足
  • 対策:さらに300Km慣らし運転後フルパワーチェック。滑ったら、さらに300Km慣らし運転後に再チェック
  • 原因:伝達力不足・プレートヒズミ
  • 対策:ヒズミプレート交換・圧着力増加・プレート枚数増加

最近、クラッチ周辺をさわった

  • 原因①:ペダル遊び過少
  • 原因②:クラッチプレート類の組立て順ミス
  • 原因③:クラッチハブスプラインへのグリス塗り過多
  • 原因④:クランク、クラッチレリーズ、ミッションのオイルシール破損

ある日、突然滑り出した

最近、ハードな走行をした

  • 原因:ヒズミ発生・増大による線接触

ハード走行はしていない

  • 原因①:カーボンプレート磨耗による圧着力低下
  • 原因②:カーボンプレートの割れ

セルギヤが破損

一部の歯が破損

  • 原因:セルギヤ不良
  • 対策:純正ノーマル新品に交換
  • 原因:始動時の点火時期設定不良
  • 対策:ECUの設定変更
  • 原因:エンジンオイル粘度不良
  • 対策:低温始動に対応したオイルに交換

全周の歯にキズ・破損発生

  • 原因:クラッチ周囲の部品脱落噛み込み
  • 対策:点検・修理

セルギヤの歯の前後方向の位置が合わない

  • 対策:セルモーター取付け位置を改造修正

変換部品がおかしい

ロッド折れ・曲がり・磨耗

  • 対策①:破損部品を新品交換あるいは修正する
  • 対策②:取扱説明書どおりに組む
【 クラッチ無料点検サービスの御案内 】

滑る、切れが悪いなど、使用上で不具合が発生した場合は、カーボンクラッチ本体一式を弊社へお送りいただければ、現品到着翌日以降2~3営業日以内に無料で点検をして結果をご連絡いたします。点検前の準備、点検の内容など、商品点検対応について詳細はこのページ下記にて御案内中ですのでご確認下さい。
※点検ご依頼時に発生する発送代金(送料)はお客様ご負担となります。送料着払いで送られた場合、返送時に送料分請求の代金引換発送での対応となりますのでご注意願います。

ATS製品に関するご質問、
お問い合わせはコチラ

ATSクラッチシステムのオーバーホール要領

クラッチ点検・測定表(カーボン、メタル共通)

中・長期間、「正常に使っていたクラッチが滑り始めた」あるいは「切れにくくなった」ときの対処方法を説明します。クラッチ部品のヒズミと磨耗量を測定して、オーバーホールの作業内容を決めます。代表的な例を図解して説明しますが、これが全てのクラッチに合致するわけではありません。測定方法や測定結果の判定方法の詳細につきましては、弊社までお問い合わせ願います。

■作業上の注意点


分解方法 エアブローで粉塵を除去し各部品の状態をチェックすること。分解時に全部品にマーキングして、元の順番・裏表に戻せるようにすること。
測定方法 ヒズミは、鋼尺とスキマゲージで測定。ディスクの磨耗は、マイクロメーターで。フライホイールのヒズミは、ケーシングを分離せず測定。
組付方法 必要に応じてサラバネを新品交換する。(特に部品が青色になっている場合は要交換)元通りの順番・裏表に組み立てる。傷んだATSボルト類は新品交換し、ボルト類はすべて指定トルクで締め付ける。クラッチハブの外周のリングは、折れやすいので曲げたり抜いたりしない。
クラッチハブのスプラインに塗布するグリスはごく少量とする。フライホイールボルトは、必ず新品交換する。
部品厚さ カーボンディスク 3.9mm(日産車用シングルクラッチのディスクは8.0mmの物もあり)。クラッチプレートA 5.5mm。
下図は、オーバーホールが必要な状態のカーボントリプルクラッチを示します。滑りや切れ不良が発生したクラッチは、プレート類とフライホイールが下図に示すような傾向でヒズミや磨耗を生じています。(図のヒズミや磨耗は、理解しやすいように誇張して描いています。)

■プレート類の新品交換なしで性能を復元する方法

条件 切れ不良が発生していないこと。鉄部品(プレッシャプレート・クラッチプレートAとフライホイール)のヒズミ(A,B,C,D)が最大0.5mm以内であること。(元の組み合わせで再使用する場合は、比較的大きなヒズミが生じていてもOKです。)クラッチプレートB(カーボンディスク)の厚さが2mm以上であること。(クラッチプレートは2mm以下になると使用中に割れる可能性が高くなります)
作業内容 37189-10プレート(P)をカバー裏面に1枚追加する。ディスクの磨耗合計値=3.9×(内蔵枚数1~3枚)-(b+c+f)。磨耗合計1~1.5mmに対してプレート1枚(厚さ1mm)を追加し、この場合ベアリングスリーブの首下長さの変更不要。磨耗合計が1.6mm以上の場合は、弊社へご相談願います。
補足 鉄部品のヒズミが0.6mm以上の場合は、その部品を新品交換してください。交換した部品と接触するカーボンディスクの偏磨耗が0.2mm以内であること。(ここでいう偏磨耗とはb-a,c-d,f-eで求められる値をいいます)a,c,eは、カーボンディスクの接触面の最外径位置の厚さです。b、d、fは、カーボンディスクの接触面の最内径位置の厚さです。

■鉄部品(プレッシャプレートやクラッチプレートA)を新品交換する方法

条件 クラッチプレートB(カーボンディスク)の偏磨耗が以下の数値であること。b-aの値が0.2mm以内/c-dの値が0.2mm以内/f-eの値が0.2mm以内
作業内容 プレッシャプレートあるいはクラッチプレートAを新品交換する。
補足 組み付け初期(300~1000km走行)には多少滑りやすくなります。偏磨耗が0.4mm以上で接触相手を新品に替える場合は、クラッチプレートBも新品に交換する必要があります。

■クラッチプレートB(カーボンディスク)を新品交換する方法

条件 プレッシャープレート、クラッチプレートAとフライホイールのヒズミ(A、B、C、Dそれぞれの値)が、0.1mm以内であること。
作業内容 クラッチプレートBを新品交換する。
運転操作 組み付け初期(300~1000Km走行)には多少滑りやすくなります。
【 クラッチ無料点検サービスの御案内 】

滑る、切れが悪いなど、使用上で不具合が発生した場合は、カーボンクラッチ本体一式を弊社へお送りいただければ、現品到着翌日以降2~3営業日以内に無料で点検をして結果をご連絡いたします。点検前の準備、点検の内容など、商品点検対応について詳細はこのページ上記にて御案内中ですのでご確認下さい。
※点検ご依頼時に発生する発送代金(送料)はお客様ご負担となります。送料着払いで送られた場合、返送時に送料分請求の代金引換発送での対応となりますのでご注意願います。

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