イニシャルトルクを測定し調整してタイムアップ!

LSDをつけた左右駆動軸の片方を固定し他方を回そうとすると強い力が必要ですが、回り始めたときの力をイニシャルトルクといいます。コーナリング中に予測したとおりにLSDを反応させる、つまりドライバーが安心してアクセルを踏み込める状態にするには適正なイニシャルトルクが不可欠です。イニシャルトルクが不足すると加減速時の車の挙動が不安定で非常に唐突な姿勢変化が起きます。 想像しずらいかもしれませんが、実はイニシャルトルクの存在がデフロック力の変化を滑らかにしているのです。LSDのデフロック力を増減する要因にはアクセル操作、ハンドル操作、車両や路面のコンディションなどがあり、これらの影響を受けてLSDはロック力を変化させますが、この変化が唐突に起きないようにするのがイニシャルトルクです。アクセルを踏込むと徐々にデフロックしていくという感じがあるのか無いのか、このフィーリングの差はドライバー心理に多大なる影響を与えてレースの勝敗を大きく左右します。コーナーでアクセルを踏込んだ瞬間にアドレナリンが噴き出すか冷汗が出るか・・・この違いは非常に大きいです。イニシャルトルクが低過ぎるとアクセルを緩めた瞬間にも唐突にデフロックが解除されタイヤ1,2本分走行ラインが飛びます。
イニシャルトルクは運動選手の筋肉のようなものです。イニシャルトルクが小さいLSDは、筋肉の発達していない運動選手のようなもので当然レスポンスが鈍いです。低イニシャルは、ドライバーの操作に対する車の反応の遅れや車の挙動変化をドライバーが感知するまでの時間を遅らせてタイムアップを邪魔します。 イニシャルトルクの適性化によって速まる反応速度は100分の1秒単位ではありますが、これが蓄積して0.1秒台のタイム差となり結果的に勝敗を左右するのです。イニシャルトルクを変更しながらドライビングに最適なトルクを探り出し、そのイニシャルトルクでレースの予選や決勝を迎えるようにすればベストタイムが狙えるということになります。
メタルLSDの場合、イニシャルトルクを上げると異音が出やすくなるので、異音の出にくいLSDオイルを選択する必要があります。また、コーナー進入時のアンダーステアが強まるので、LSDカムの仕様を最適化する、ドライビングを工夫するなどの対策が必要となります。
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